NPO birth

公園マネジメントの要
「パークコーディネーター」

掲載:2020.11.14

Feature 1

「パークコーディネーター」という仕事

パークコーディネーターは、地域や市民との連携で公園づくりをおこなう専門スタッフです。公園があることで人々の暮らしが豊かになり、夢を実現するステージとして市民が公園を使いこなすために、さまざまなサポートをおこなっています。

 

日本ではまだ珍しい職種のためか、「パークコーディネーター=公園の中の仕事をする人」との誤解を受けがちです。が、地域や市民と連携してのイベントやセミナーの企画、ボランティア活動の立ち上げや活動支援、学校の総合学習の受け入れ、大学の研究者による社会実験、企業の社会貢献活動、福祉施設との連携、ステークホルダーとの協議会の運営など、その仕事は幅広く、産官学民の様々な主体との連携を創出しています。

 

パークコーディネーターは、市民ニーズの多様化、公園予算の減少、少子高齢化などの社会的課題に応えるために、人材や資金、情報など多方面からのリソースを集めて調整し、活用するという一連のマネジメントを担う公園運営の要となる役割を担っているのです。

パークコーディネータ
Feature 2

パークコーディネーター職の創設

2011年4月。NPO birthが東京都の都立公園「武蔵野の公園グループ」の指定管理業務を開始した際に、公園とステークホルダー(地域、ボランティア、市民団体など)の利用調整をおこない、意見を集約する役割が求められるようになりました。

 

それまでNPO birth内には、ボランティア活動を調整する役割をもったボランティアコーディネーター職がありました。しかし、公園を取り巻く社会情勢が変化し、また、ステークホルダーが多様化したために、新しい市民ニーズを救い上げ、調整する専門職「パークコーディネーター」が必要となったのです。

 

そこでNPO birth内に、パークコーディネーター職(PARK -COORDINATOR)を創設。その後、「多摩部の公園グループ」や「狭山丘陵グループ」の公園にも、パークコーディネーターが配置されるようになりました。

 

現在、NPO birthには、16名のパークコーディネーターが在籍し、都市公園の管理や緑地保全を担っています。

ステージバランス
Feature 3

「管理運営状況評価」Sランクの理由

ところで、東京都の都立公園では、2006年度から指定管理者による管理がおこなわれており、毎年9月に管理運営状況の評価結果が公開されます。評価は4段階(S、A、B、C)で示され、2019年度は、94施設中9施設が最高評価のSを獲得しました。

 

その9施設のうち、武蔵国分寺公園(国分寺市)、野山北・六道山公園(武蔵村山市)、綾南公園(八王子市)、野川北公園(調布市)の4施設に、パークコーディネーターが配置されていることは、注目に値します。そして、これらの施設のパークコーディネーターは各公園の指定管理者の構成員であり、NPO birthのスタッフです。

「指定管理者管理運営状況評価」では、公園グループや施設ごとに、管理の履行状況、安全管理、法令遵守、サービスの利用状況、利用満足度、行政目標の達成といった様々な観点から評価がおこなわれます。

過去3年間の都立公園等の評価を表にまとめてみました。

S A B C 合計施設数
令和元(2019)年度 9 23 61 1 94
平成30(2018)年度 6 15 73 94
平成29(2017)年度 4 17 73 94

*平成30(2018)年度以前は、「S・A・A・B」の4段階評価。これを令和元(2019)年度の表記に当てはめて表記。

また、「指定管理者管理運営状況評価」では、各施設のランクを決めるだけでなく、公園グループや施設に対し、詳細な評価内容も発表しています。その評価の中に浮かび上がってくるのが、パークコーディネーターの果たす重要な役割、そして、その存在意義です。

東京都建設局から発表されている令和元(2019)年度の評価結果一覧の中から、NPO birthのスタッフであるパークコーディネーターが配置されているSランク獲得各施設の評価を抜粋してご紹介しましょう。

■武蔵野の公園グループ (武蔵野公園、浅間山公園、野川公園、狭山・境緑道、玉川上水緑道、武蔵国分寺公園、東伏見公園、六仙公園)

指定管理者:西武・武蔵野パートナーズ(西武造園株式会社/ミズノスポーツサービス株式会社/特定非営利活動法人 NPO birth/一般社団法人 防災教育普及協会)

《全体に対する評価》

  • グループ全体として、市民参加を促すノウハウを備えた、専門性のあるスタッフを育成/配置することで、度の公園も高いレベルでのボランティア育成型及び地域連動型のイベント企画、ガーデニング、環境保全等を実現している。
  • グループ全体としてBBQのWEB予約及び有料ゴミ袋回収サービスを開始し、公園利用者の利便性を向上させるとともに、前年度近隣より苦情の多かった不法投棄を減少させることにつなげた。

《野川公園》

  • 継続的に実施されている動植物のモニタリング調査や市民団体との情報交換などを含め、豊富な知見に基づく湿地帯の管理作業を行うとともに、近隣のこう行く機関などと連携し、外来種の駆除を積極的に行い、正しい知識の普及啓発にも取り組んだ。
  • レンジャーの仕事を体験する子供向けプログラム「キッズレンジャースクール」は昨年度からのリピーターが参加するとともに、参加者満足度が100%となる大変人気のイベントとなった。また、近隣の中学校、都立高校、大学等から、総合学習やインターンなどを継続して受け入れ、外来種の除去や希少種の保全管理作業を行うなど、教育機関等との連携を促進した。更に、初開催の「森の地図フェスタ」では、地元の飲食店のマルシェや地域作家のワークショップを展開し、地域の各団体との連携強化を図った。

《武蔵国分寺公園》

  • 国分寺崖線の野鳥の森で、ボランティアとの連携により、外来種の選択的除草や落ち葉掻きなど順応的な保全管理を実施した。キンランなどのラン類の網掛け対策を実施することで結実率が90%に以上になり、次世代株の育成に成功した。また、高圧受電設備の交換工事のほか、手すり支柱を予防保全的にアーク溶接し施設長命化した。
  • 「あったらいいな」をみんなでつくるプロジェクトを推進し、市民参加による賑わいのある公園として定着している。今年度は地元作家グループによる「てのわ市」において新たに野鳥の森で大型作品展を開催し、昨年を上回る出店者101組、7,500人の参加があった。
  • 歴史と自然の両面から公園や地域の魅力を再確認するプログラム「ディスカバーツアー野鳥編」を国分寺市と共催して実施した。幅広い年齢層に公園の普段とは違う魅力を紹介し、公園の利用向上につなげた。

■多摩部の公園グループ (陵南公園、小宮公園、滝山公園、大戸緑地)

指定管理者:西武・多摩部の公園パートナーズ(西武造園株式会社/西武緑化管理株式会社/特定非営利活動法人 NPO birth/一般社団法人 防災教育普及協会)

《全体の評価》

  • グループ全体として、公園の環境保全やガーデニングなどの市民参加について、気軽に入れる入口で参加の裾野を広げ、その中から専門性の高いボランティアを育成していく仕組みがきちんとプログラムされている。年々そのノウハウが積み上げられ、公園運営に関わる人の輪が厚くなっていることが評価できる。

《陵南公園》

  • 陵南公園では、昨年から引き続き、ヤマアカガエルの卵塊の保護を実施した。希少種の保全のための良好な環境作りを推進し、新たに昆虫ビオトープ内にて希少種のショウリョウバッタモドキを確認するなど成果を上げている。
  • 新規に「青空Smile親子Fes♪」を開催し、市内の保育施設、子育て応援企業、大学生等と連携して親子プログラムを実施し、これまで構築してきた地域関係者との身体関係の更なる発展につなげた。また、学生ボランティアが、ばったランドの外来種除去やじゃぶじゃぶ池のおたまじゃくし保護などの保全作業、親子向け体験プログラム「KIDS DAY」の開催などを行い、年間17回延べ287人が参加した。
  • コミュニティガーデン講座の昨年度修了生によるボランティアグループ(ガーデンサポーター)を新規に立ち上げ、講座のサポートや花壇づくりなどを担ってもらい、協働の取組を更に推進した。
  • 「こもれびピクニック」を地域の子育て世代が運営する団体と初めて共催し、計20種の出展や体験プログラムを実施した。公園に賑わいを創出し、参加者から好評の声を多数得るとともに、地域の活性化につなげた。

■狭山丘陵グループ (狭山公園、八国山緑地、東大和公園、野山北・六道山公園、中藤公園)

指定管理者:西武・狭山丘陵パートナーズ(西武造園株式会社/西武緑化管理株式会社/特定非営利活動法人 NPO birth/特定非営利活動法人 地域自然情報ネットワーク/一般社団法人 防災教育普及協会)

《全体に対する評価》

  • 自然環境に係る専門性、環境学習プログラム、ボランティア参加プログラムについてのスタッフのスキルアップが図られていることが評価できる。それらに係る新しい手法が各公園で研究開発され、グループ全体で共有されていることが全スタッフの向上心やスキルアップにつながっている。

《野山北・六道山公園》

  • 谷戸や樹林地、草地、それぞれの環境で野生生物の生息空間を新たに創出するため、冬期湛水や電力会社と連携した伐採、草刈り等を実施した。特に公園で初となる冬期湛水は、アカガエル類の繁殖地や越冬する冬鳥の餌場として機能していることが確認できた。
  • 公園ボランティアに新規に105人が登録するとともに、全体では25種類の活動を実施し、延べ4,533人が活動に参加した。
  • 里山の自然により親しんでもらうことを目的に、アウトドア企業と連携して「SATOYAMA DAY CAMP」を実施した。火起こし体験やテント設営のレクチャー、雑木林保全活動紹介など日常では体験できない内容により、アンケートでは参加者全員から非常に高い評価を得て満足度100%となった。
Feature 4

新たな公園マネジメントの担い手

公園は、様々な地域課題を解決するプラットフォームとして期待されています。その公園を、多様な人々が関わり合う「まちづくりの中核」として機能させるために必要なのが、パークコーディネーターという存在なのです。

※これからの公園に求められる「7つの公園力」については、当サイトの「NPO birthのミッション・ビジョン行動の指針」内の「行動の指針」を参照https://www.npo-birth.org/introduction/#sec02

 

NPO birthでは、都立公園3グループ(17公園)と西東京の市立公園(54公園)の指定管理をおこなっており、公園グループごとに、担当のパークコーディネーターを2~6名配置しています。(都立公園では指定管理者側からの提案で配置していますが、西東京市立公園では市民協働担当者の配置が仕様書において必須条件となっています。)

 

パークコーディネーターは、公園と地域のポテンシャルを最大限に発揮させ、人と人をつなぎ、新たな活動や事業を生み出す役割を果たしているのです。

協働コーディネートチーム

【参考文献のご紹介】

  • コラム『公園が変わる! 街が変わる!』(新・公民連携最前線|PPPまちづくり – 日経BP)

執筆:NPO birth事務局長 佐藤留美

・第11回 パークコーディネーター ~新たな公園マネジメントの担い手~
(1)公園と地域をつなぎ、公園の「あったらいいな」を実現する

・第12回 パークコーディネーター ~新たな公園マネジメントの担い手~
(2)市民とともに、公園と地域のポテンシャルを掘り起こす

・第14回 パークコーディネーター ~新たな公園マネジメントの担い手~
(3)専門スタッフとのコラボレーションで“公園力”を高める

 

  • 『パークマネジメントがひらくまちづくりの未来』

14人のスペシャリストが次代のまちづくりを担う若者に贈る、新しいまちづくりの必読書です。NPO birth事務局長の佐藤留美が、「第3章 パークマネジメントのこれから」の「パークコーディネーターがつなぐ公園とまちの未来」を担当いたしました。

判型:A5版
本文:216頁(内口絵8P)
価格:2,530円(税込)
出版社 : マルモ出版 (2020/10/26)

マルモ出版リンク:https://www.marumo-p.co.jp/smp/item/B048.html

Amazonリンク:https://www.amazon.co.jp/dp/4944091680/

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